Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
「お待たせ〜!!」
ケーキを乗せたトレーを両手に持ち、笑顔でエミリたちの座るテーブルに戻ってくるアメリ。
そして、さっきと同じようにケーキを机に並べていく。
「ね、エミリ! 私、もうすぐ仕事終わるから、ここにお邪魔させてもらってもいい?」
「私は別にいいけど……」
ぐるりとエルヴィンやペトラたちの顔を見ては、皆が頷いたことを確認してから、もう一度アメリに向き直る。
「じゃあ、ケーキ食べながら待ってるね」
「は〜い」
許可を貰ったアメリは、トレーを抱えたまま美しい紫色の長い髪をひらりと翻し、そのまま控え室へ入っていった。
「可愛い子だね〜あの、アメリって女の子!」
アメリのあの整った顔立ちとふわりと揺れる長い髪、目も大きくぱっちりとしており、ほんのりと色付いた唇から、正に彼女は美少女の部類に入る。
誰が見てもそう思うだろう。
「そう、ですね……訓練兵の時、よく男子から告白されてる場面に何度も遭遇しましたよ」
「そりゃあ、モテるだろうなあ。お前と違って女の子らしいし」
「フィデリオうるさい。黙れ」
再び調子に乗り出すフィデリオの頭を拳で殴りつければ、「そういうとこだよ」と言い返される。それも無視してエミリはフォークを手に取った。
「ね、エミリ。もしかして、以前とっても仲良かった子がいたって話、あの子のこと?」
ペトラは、リヴァイ班へ昇格した旨をエミリに伝えた時に出てきた、エミリの友人の話を思い出す。
あの親しげな様子と訓練兵時代からの友人という話から、おそらくアメリがエミリの言う大切な友達なのだろうと察しがついた。
「そうだよ。ほら、この前すぐに会えるって言ったでしょ?」
「うん……でも、エミリは彼女がここで働いているの知らなかったのよね? どうしてすぐに会えるってわかったの?」
「アメリは、もう訓練兵を卒業して駐屯兵団を選んだって手紙で聞いたから、生活場所も調査兵団の宿舎から近くなって、すぐに会えると思ったの」
調査兵団と駐屯兵団の兵舎は、同じくウォール・ローゼ内にある。
会おうと思えばいつでも会える距離だ。