Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
「ケーキまだかなぁ……」
両手で頬杖をつきながら、今日最大の楽しみであるケーキたちを待ち続ける。
ケーキ食べ放題をしたいという願い事は、リヴァイの奢りという形で見事に叶ってしまった。
今度、また何かお礼をしなければと、頭の片隅でそんなことを考える。
「お待たせしました〜!!」
店員の声でケーキが運ばれてきたのがわかる。美味しそうなケーキたちを早く見たくて、エミリは店員の方へ振り向いた。
「えっ」
そして、そんな嬉しそうな表情から一転して、エミリは驚いた顔を浮かべ固る。
「どうしたの?」
そんなエミリの様子を感じ取ったペトラたちも、エミリが目に映すものへと視線を移動させる。
特にこれと言って驚くようなものは何も無い。しかしペトラは、隣に座るフィデリオの空気が変わったのを感じた。
「……アメリ?」
驚いた表情のまま、一つの名前を口にするエミリ。そんな彼女に、アメリと呼ばれた店員は、ニコリと優しく微笑んだ。
「久しぶり、エミリ! 相変わらずの素晴らしい食欲で安心したよ!
フィデリオもお久しぶり〜! 君のチャラ男っぷりも全然変わってないね!」
そう言いながらアメリは、運んできたケーキたちをエミリの前へ並べていく。
そして、残りの注文もすぐ持ってくるねと言い残し、また厨房の方へ戻って行った。
「えっと……エミリとフィデリオの知り合い?」
ポカンと呆けた顔のまま瞬きを繰り返す幼馴染コンビに、ペトラが顔の前でぶんぶんと手を振りながら問いかける。
かなり親しげな様子であったが、アメリとは長い付き合いなのだろうか。
「うん、まあね……アメリは、訓練兵団の兵士なの。私たちより二年後に入団してきたんだけど、同い年だから敬語とか敬称はナシの付き合いなの」
「そうなんだ」
「けど、あいつ何でここで働いてんだ?」
「そこよね……」
一通り簡単な説明をペトラたちにした後、訓練兵である彼女が何故、この飲食店で働いているのか、その謎について考える。