Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
真顔でただエミリの声に耳を傾けるリヴァイ。そんな彼の肩にポン、と手を置いたのはミケだった。
同情の意味を込められた無言の慰めに顔を顰め、リヴァイはパシリとミケの手を払う。
そして、視線を感じる先へ注目すれば、奇行種が机に突っ伏し肩を震わせていた。
笑っている。しかも馬鹿にされている。
彼女の様子からそれを感じ取ったリヴァイは、何が何でも一発お見舞いしてやると心の中で誓った。
「リヴァイ兵長」
ハンジを睨みつけていると、隣から愛しい声がリヴァイの意識を逸らせる。
「なんかハンジさんってば、さっきから余計なことしか言ってませんけど……本当に嫌な気持ちになったら全然言って下さいね!!」
満面の笑みに最早もう何も言葉など出てこない。リヴァイは無言で、隣でケーキのメニュー表を広げるエミリを凝視することしかできなかった。
「さて、何食べようかな〜!!」
一旦、妙なハンジの恋愛話を強制終了させ、この店にやってきた本来の目的を達成すべく、エミリは再びメニュー表に齧り付く。
「う〜ん……迷う……とりあえず全種食べようかな」
「ちょ、ちょっと待ってエミリ! 全種類って……ここのケーキ食べ放題、20種類のケーキがあるのよ……? ホントに制覇するつもり?」
しれっと零したエミリの言葉にギョッとしたペトラが、身を乗り出してメニューに夢中のエミリに注意を呼びかける。
「もちろん、全部食べるよ! その中で、気に入ったやつお代わりしてく!」
「……そ、そう」
どうやら20個以上のケーキを食べるつもりらしい。
さっきあれほど食べたというのに、一体全体どんな胃袋をしているのか。これはもう、ケーキは別腹の域を越している。
「すみませーん! 店員さーん!」
呆れ顔のペトラたちを放って、店員に手招きして見せるエミリは、とても幸せそうな顔をしている。
「お待たせ致しました」
「この食べ放題のケーキなんですけど……」
「はい、どちらに致しましょう?」
「全部一個ずつで!!」
「えぇ!?」
エミリのとんでも発言に、この時は流石の店員も目を見開きエミリを凝視していたという。