Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
リヴァイの牽制が入り、なんとか落ち着いた幼馴染コンビの喧嘩。ペトラとオルオはいつもこれに付き合わされているのかと思えば、かなり気の毒だと同情する。
不貞腐れたまま食事を平らげていくエミリと、同じく不機嫌な顔で酒をどんどん飲んでいくフィデリオ。そんな彼の頬は、酒のせいでほんのりと赤くなっていた。
「よお〜、エミリ!」
ドカン、とテーブルに酒瓶が置かれる音ともに、ゲルガーに呼び掛けられたエミリは、フォークを口に運びながらも目線だけを彼の方に向ける。
「そんな暗い顔すんなぁ! 美人が台無しだぞ〜?」
「……どーも」
「フィデリオの言うことなんざ気にすんな! なっ? 確かにお前は、他の女と比べて胸はねぇが顔は十分美人の部類に入ってるからよ!」
「ゲルガー、フォローになってないぞ。それ」
エミリのフォークを動かすスピードが、一段階速くなったのを見て、ミケがすかさずツッコミを入れるも、酔ったゲルガーは豪快に笑いながら酒を煽り続けていた。
「全く、あんたもホントにデリカシー無いんだから……」
酔っ払いの頭をバシッと叩いたナナバは、ゲルガーを無理やり元の席に戻し、代わりに彼女がエミリの隣へ腰を下ろした。
「エミリ、もう男共の言い分なんて気にするな。心配しなくても、お前は十分魅力的だ」
「ナナバさん〜〜!!」
今にも感動の涙を流しそうなエミリは、フォークを置いてナナバの胸に抱きついた。
やはり、女心をわかってくれるのは同性に限る。
「でさあ、エミリ! 最近、好きな人とかできたりしたの〜?」
ナナバに甘えていると、今度は酔っ払いの奇行種と化したハンジが絡んでくる。
いきなり始まった恋愛話にアンテナをピンと張るのは、ナナバとは真反対でエミリの隣に座る兵士長だ。
「……いきなり何なんですか……?」
また突然訳のわからない質問を投げかけるハンジが、何か企んでいるのではないかと警戒態勢に入る。そんなエミリに構わず、ハンジはギラリと怪しげに眼鏡を光らせた。