Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
「いただきまーす!!」
手を合わせて高らかにそう声をあげれば、運ばれてきた料理に早速齧り付く。
グラタン、チーハン、パスタ、シチュー、サラダ、スープ、じゃがバター、そしてスライスされた肉など、エミリの前だけ料理の数が異様だった。
「……お前、相変わらずよく食うな」
「エミリらしくていいんじゃないか?」
リスのように頬を膨らませながらご飯を食べていくエミリを見るリヴァイの目は、完全に引き気味である。
これらの後にケーキ食べ放題をするのかと思うと吐き気を催しそうだ。
そんなリヴァイとは正反対に、エルヴィンは穏やかな笑みを乗せながらエミリを眺めている。彼にとってはもう驚くほどのことでもなくなったらしい。
「はあ〜あ、お前そんなんだからモテねぇんだよ」
幼馴染の嫌味にエミリの手がピタリと止まる。
「なーにが『ケーキは別腹です』だよ。食いしん坊ならまだ可愛いもんだけどな、お前の場合は大食いすぎて逆に引くわ」
「食いしん坊も大食いもあんまり変わらないと思うわよ」
頭の悪そうな嫌味を飛ばすフィデリオに、ペトラが目を半眼にして静かにツッコミを入れる。
「ただでさえ暴力女なんだから、飯食う時くらいもっと女らしくすれば?」
「……あんたねぇ、何なのよさっきから人が幸せにご飯食べてたら!!」
とうとう頭にきたエミリは、バンッと机を叩いて立ち上がりフィデリオに怒鳴りつける。
「はっ、ホントのことじゃねぇか! この大食いチャンピオン!」
「うっさい! このお調子者! 女たらしのナンパ野郎のクソ野郎に言われても説得力なんて微塵も無いのよ!! 禿げろ!!」
「てめぇ、何かある度に禿げろ禿げろ言いやがって! そんなに坊主が好きかよ! あ?」
店の中で突然、喧嘩を始める幼馴染コンビにペトラとオルオは頭を抱えた。
「また始めやがったな……」
「ほんっと……予想はしてたけど、見事に裏切らないわよね。この二人」
できることなら他人のフリを貫きたいものだが、過去に何度か試し既に失敗に終わっているため、二人はもう諦めた。
その失敗談とやらは、ご想像におまかせする。