Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
店の扉を開けたリヴァイは、出入口で立ち尽くしたまま動かない。彼の瞳に映るのは、酒を煽りはしゃぐ見知った顔が幾つもあった。
時間となり、エミリと共に目的地の店へ向かったまではよかった。
想いを寄せる相手と二人きり、夜道を歩くだけでリヴァイの瞳に映る世界は輝いていた。彼の表情も心做しか柔らかかったほどである。
しかし、そんな幸福な時間は、店の戸を開けた瞬間終わってしまった。
「……おい、どういうことだ。なぜ……何故、お前らがここにいる」
「あ〜〜!! リヴァイじゃないかあ! いやあ、奇遇だねぇ!!」
片手に酒瓶を掴んだまま、もう片方の手を大きく振り、頬を赤く染めたままわざとらしく大声を上げるハンジのその行動に、リヴァイはさらに眉間の皺を深くした。
そんなハンジの前では静かに酒を傾けるエルヴィンとミケ。さらにペトラ、オルオ、フィデリオの三人が、苦笑を浮かべて座っている。
そんな彼らの後ろの島には、ハンジ班のモブリットたち、ミケ班であるナナバやゲルガー、そして何故かエルドとグンタも一緒だった。
「あれ、なんか皆さんお揃いで……宴会ですか?」
「そーなんだよ〜! ほら、ペトラたちがリヴァイ班に昇格しただろう? そのお祝い会をしていたんだあ!!
ホントはね、エミリとリヴァイも誘おうと思ってたんだけど、二人で出掛けるっていうから仕方がないなあって諦めたんだ……!
それがまさか、同じ店だったなんて……!!」
眼鏡を怪しげに光らせ説明するハンジ。彼女の思惑に気づいていないエミリは、「そうだったんですか!」と普通に納得している。
「おい、ハンジ……てめぇ、ふざけんじゃねぇ。削がれてぇのか……」
「え、何が? 何の話〜??」
しらばっくれるハンジの頭を思い切りぶん殴ってやろうと足を一歩前へ出せば、隣から腕を掴まれ止められた。
「兵長、仕方ないですよ。たまたまお店が被っちゃっただけなんですから、そんなに怒らないであげて下さい」
「あ? あのなあ、アイツは」
「それに、皆で食べた方が美味しいですよ! ね?」
同時に放たれるエミリの眩い笑顔が、リヴァイに効果抜群の威力を発揮する。
仕方なく舌打ちを鳴らし、エミリに連れられ渋々席に着いた。