Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
部屋に入って最初に目がつくのは、丁度向かい側に設置されている窓。
扉が開けられているため、外から気持ちの良い風が部屋に入り込み、カーテンを優しく揺らしている。
その窓を挟んで並んでいるのは、二つのベッド。
さらに部屋の両側には、向かい合わせでクローゼットが一つずつ設置されてあった。
ベッドの隣にはテーブル、本棚も幾つか置かれており、一目見てこの部屋が寝室であることは誰でもわかる。
「この部屋は、今日からお前達が使えることになった」
「「…………ええ!?」」
揃って声を上げた二人は、再び顔を見合わせた後、ぐるりと部屋を見回した。
入団した時から今までは、ずっと大部屋を使用していた。しかし、これからはペトラとルームシェアをすることができるようだ。
分隊長にもなれば個室を用意されるのと同じように、立場が昇格すれば、それに伴ってプライベートが確立されていく仕組みとなっている。
それはエミリもペトラももちろん知っていた。
でもまさか、このタイミングで二人部屋を貰えるとは思っていなかったのだ。
「エミリ、やったね!!」
「う、うん……」
「……どうしたの?」
嬉しそうな表情のペトラとは反対に、浮かない顔を見せるエミリ。
ペトラとナナバは、エミリの顔を覗き込み返答を待った。
「……その、リヴァイ班になったペトラはわかるんですけど、私……昇格なんてした覚えが無いんですが……」
「なんだ、そんなことか。あのな、エミリ。専用の仕事部屋を与えられ、ファティマ先生の指示とはいえ、お前のためだけに薬草園まで建てられることになったんだ。
これも十分昇格に値する。そうだろう?」
「……ナナバさん」
ナナバの言葉にようやく納得の表情を見せたエミリは、ペトラと手を取り合い喜んだ。
「あ、ということは……フィデリオとオルオもですか?」
「ああ。今、ゲルガーが案内しているよ」
二人も今のエミリたちのように喜び合っているのだろう。近々、昇格お祝い会でも開きたいなどと言葉を交わしてから、早速、部屋の移行へ取り掛かった。