Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
「へぇ……なら、その子はきっと、とっても素敵な子なのね」
「そう、思う?」
「もちろんよ! エミリが大切に思っている子なんだから、きっと素敵な子だって思うわ」
時たまフィデリオから聞くエミリの小さい頃や訓練兵時代の話は、あまり良いものばかりでは無かった。
幼い間に出来た心の傷は、そうすぐに癒えるものでもなく、深い傷痕が今でも少し残っているはずだ。
そんな中で与えられる温かい言葉は、その深い傷と同じくらいの威力を持ち、心の栄養剤となってくれる。
そのような救いの手を差し伸べてくれる友達が、過去のエミリに居たのだということを知り、ペトラは少しホッとした。
「いつか、会ってみたいなあ……」
「紹介するよ! きっと、すぐに会えると思うから!!」
「そうなの? じゃあ、楽しみにしてるね!!」
二人は、そうしてふわりと優しく微笑み合った。
素敵な友達がまた一人できる。そう思うと楽しみで仕方が無い。
ペトラは胸元にそっと手を当て、訪れる幸せな出来事に思いを馳せた。
そんな時、コンコンとノックの音が部屋の中に響き渡る。
来客を確かめるためにドアノブを捻り押し出せば、フィデリオの上官────いや、元上官と呼ぶべきだろう、ナナバが立っていた。
「あれ、ナナバさん? どうしたんですか?」
「二人とも、今、時間は空いているか?」
ナナバの問いかけに一度顔を見合わせたエミリとペトラは、揃って首を縦に振る。
「なら丁度良い。私と来てくれ」
「「……はい」」
そのまま理由も話さず歩き出すナナバの後を、慌てて二人で着いていく。
どうして呼び出されたのかわからないため、頭に疑問符を幾つも浮かべながらも取り敢えず彼女の後ろをただただ着いて歩いた。
「ここだ」
やがてナナバが足を止めたのは、一つの部屋。扉を開け中へ入室する彼女に続き、エミリとペトラも足を踏み入れた。