Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
「私だけじゃないのよ! オルオとフィデリオもリヴァイ班に入ることになったの!!」
「そっかあ……皆すごいなあ」
三人は、いつの間にかリヴァイの下で戦えるほど強くなっていた。
今更だが、一人置いていかれたようで何だかとても寂しい。
「……みんなすごいね、本当に」
「それを言うなら、エミリだって凄いわ」
「えっ」
ペトラの言葉に、エミリは床に移していた視線を彼女の顔へ戻す。
そこには、優しく微笑む親友がいた。
「ファティマ先生の弟子に誘われて、その人の下で薬学を学べることになったじゃない。
専用の仕事部屋もできて、薬草園まで作って貰えて……それって、エミリの力が認められたってことでしょ? エミリも十分凄いよ!」
「……ペトラ」
いつだって凹んでいると元気をくれるのは、ペトラの言葉だった。
調査兵団に入団してペトラと出会ってから、いつも彼女の言葉に支えられている。
自分にとって大きな、かけがえのない存在。
ひとりぼっちだった昔の自分には考えられないほど、今は素敵な仲間や友達に恵まれている。
「えへへ……ペトラ、ありがとう!」
緩む涙腺。それを誤魔化すためにギュッとペトラに抱きつけば、ペトラも抱き締め返してくれた。
「本当に前から何度も繰り返してるけど、エミリはもっと自信持っていいんだからね?
エミリは、私には無い素敵な所がたくさんあるんだから。私は、いつだってエミリのそんな所に憧れているんだよ」
「えっ……」
ペトラの言葉にエミリは、一瞬だけ呼吸を止めた。
急に変わったエミリの空気を察したペトラは、背中に回していた腕を離し、エミリの顔を覗き込む。
「どうかした? もしかして私、変なこと言っちゃったかな?」
表情が固まったまま何も発しないエミリの様子を見て、ペトラは不安げに眉根を下げる。
「あっ……う、ううん! 違うの、そうじゃなくて……前にも今と同じ言葉をくれた子が居たから、それを思い出したの」
目を閉じれば脳裏に浮かぶ、大切な友達の顔。
辛い時はいつも隣に寄り添ってくれた。
彼女もエミリにとって、かけがえのない存在だ。