Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第5章 壁外調査
「ペトラァ!!」
エミリは急いで彼女の元へ駆けつけようと方向転換する。
だが、遠い。すぐに行けるような距離ではない。周りには巨人が沢山いる。下手に動けば自分の命も危うい。
エミリは必死に手を伸ばした。
あの日、カルラに向けてやったように──
「ペトラ! 早く逃げて!!」
声を張り上げる。しかし、ペトラは目の前に立つ巨人に怯えて、腰が抜けたのか体が動かない状態だった。
不気味な顔と圧倒的な存在感。
声が出なかった。
エミリはガスの使用量を増やし、一直線にペトラの元へ向かう。
大切な人をまた失うかもしれない、その恐怖がエミリの心を支配した。
「もう……嫌なの……」
──何も、守れない弱い自分は
「もう、たくさんなの……!!」
──また、誰かを失ってしまうのは
だから、お願い……! 間に合って!!
強く、強く願う。
けれど、現実は残酷だ。
奇跡などというものは、そう滅多に起きるものではない。
「っ!」
なかなか縮まらない距離に、エミリは絶望を感じた。
「っ……あぁ……」
座り込むペトラの前に巨人がしゃがみ込む。いつ襲われてもおかしくない状態だった。
エミリの瞳から涙が流れる。
ペトラ、お願いだから早く逃げて……
「逃げて!!」
叫んだ時だった。
とてつもなく速い何かがエミリの真横を通過し、そして気が付いた時には、ペトラの前にいた巨人が地面に倒れていた。