Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第18章 分かれ道
エミリと出会い、話をして感じ取った。エミリこそが、自分の求めていた人間であると。
だから、どうしても共に薬剤師の道のみを進んで欲しかった。
しかし、それが叶うことは無かったのだ。
なら、せめてエミリがこの先もしっかりと前を向いて行けるよう、導いてあげたいと思ったのだ。
エルヴィンやリヴァイたちと形は違うが、同じように兵士として人の命を預かる身となるのだから。
そして何より、おそらくエミリがぶち当たる大きな壁にちゃんと彼女がぶつかって行けるよう、道を示したい。
「エミリ、兵士として夢を追うというのであれば、私の弟子になりなさい。今の状態で進み続けても、貴女はきっと、一番大切な別れ道で本当に進むべき道を見誤ってしまうわ」
力強い言葉と眼差しで、エミリに手を差し出す。
エミリは少し戸惑ったが、そんなファティマの手を取り、しっかりと握り返した。
「お願いします!」
エミリが同じように力強い返事を返せば、ファティマは満足気に微笑んだ。
「ったく、結局あのばあさんの思う壺じゃねぇか……」
「まあ、そう言うな。リヴァイ」
心底面倒臭げに長い溜息を吐くリヴァイ。そんな彼の肩に手を置き、エルヴィンがまあまあ、と宥めている。
だが、エミリが調査兵団に残ることを選んでくれて本当に良かったと、リヴァイたちは心から安堵した。
「そうだわ……エルヴィン団長、せっかくですから調査兵団の敷地に、エミリ専用の薬草園を造ろうと思っているのだけど、よろしいかしら?」
「あ? 薬草園だと?」
また突拍子もない提案を出してくるファティマに、リヴァイは盛大に顔を顰める。
「あと、この子専用の薬室──仕事部屋も準備してあげて」
「えぇ!? し、仕事部屋って、何をするんですか……」
「薬室と今言ったでしょう? 専用の部屋が出来れば、思う存分薬の調合や実験だってできるわ。薬草園があれば、自分が必要な薬草を育てることだってできるでしょう」
エミリは、ファティマの意見になるほどと頷きながら目を輝かせている。
おそらく専用部屋ができた時の想像でもしているのだろう。とても顔がだらしない。