Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第18章 分かれ道
「…………兵士として薬剤師を目指す道を進めば、貴女は近い未来、その選択で自分を苦しめることになるわ。それでも、進むというの?」
これは、注意なんて生易しいものではない。警告である。
そして、エミリに兵士を辞めさせるための脅しでもなんでもない。
ファティマの目は真剣だ。彼女の言う未来は、おそらく必ずやって来るのだろう。
「それでも構いません」
もし、そんな暗い闇が襲ってくるというのであれば、もがいて、もがいて、もがきまくって、最後は必ずそこから抜け出してやる。
そんな強い思いがエミリの心に灯る。
「……そう」
これ以上言っても、エミリが答えを変えることはないだろう。
エミリを共に連れていくつもりでいたのに、まさかこんなにも早く断られるとは思っていなかった。
残念な気持ちはあるが、これから兵士として薬剤師を目指すエミリが、どう成長していくのかも一つの楽しみである。
「なら、納得するまで突き進みなさい」
「ファティマ先生……!」
ファティマに思いを伝えられたことが嬉しかったのか、再び明るい笑顔を見せるエミリのそれは、相変わらずとても輝かしい。
いや、エミリの輝きはこんなものではない。彼女は、もっともっと輝くことができる。
それほどの魅力を秘めているのだ。
「ねぇ、エミリ。提案があるのだけど」
ファティマは、少し口角を上げてエミリと視線をしっかりと合わせる。
今度は何を言い出すのだろうと、少し身構えながらもエミリはファティマと向き合う。
「貴女の気持ちを聞いて、私も協力したいと思ったの」
「……え」
「兵士として目指すというのであれば、おそらく違う方法で、試験とは違ったまた別の知識が、貴女には必要になってくると思うわ」
「別の、知識……?」
「そう。だから……月に数回程度になるけど、薬学を学びに私の元へ通いなさい」
「…………え、えぇ!?」
驚くエミリとリヴァイたちとは違い、ファティマは、余裕の笑みを浮かべているだけ。
エミリが誘いを断った時のためにと、別の案を隠し持っていたのだろうか。