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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第18章 分かれ道


静かな廊下をリヴァイとハンジは肩を並べて歩いていた。
そんな二人の頭の中にあるのは、もちろん団長室での出来事である。

二人にとってエミリは可愛い部下だ。
リヴァイにとっては好意を寄せている相手だし、ハンジにとっては娘にも似た感覚を抱いている。

個人的な気持ちを言うのであれば、このまま兵団に残ってほしい。

けれど、それを決めるのはエミリだ。そこに部外者が口を突っ込むわけにはいかない。


「ねぇ、リヴァイ……エミリは、どっちを選ぶと思う?」

「知らねぇよ。んなこと俺に聞くんじゃねぇ」


相当ファティマに対して苦手意識を感じているのか、リヴァイの機嫌は未だによろしくない。
3分に一度は舌打ちを鳴らしそうなほど、眉間には皺が寄せられ目付きがいつもの三倍鋭い。


「そんなこと言って、自分が一番エミリに行ってほしくないくせにね」

「………うるせぇ」


言い返すまでの少しの間、それはおそらくハンジの言葉に同意したも同然。
素直じゃない兵士長に、ハンジはやれやれと肩をすくませた。


「……でもさ、同時に安心もしてたりするんでしょ?」

「…………」


エミリが兵士を辞めて薬剤師の道へ進めば、もう壁外に行く必要はなくなる。
そう、命を落とす可能性が無くなるということだ。

いつも壁外調査に出る度にリヴァイがどれだけエミリを気にかけているか、ハンジはそれに気づいている。

だから、リヴァイが今どんな気持ちでいるのかもわかるし、そして理解もできる。


「……だけどね、私は思うんだ。エミリはいつも、私たちを振り回して安心なんてさせてくれない。
だから、今回もこれまでと同じように、私たちを安心させる気なんて無いんじゃないかってね」

「……そうだな」


エミリなら、きっと兵士であり続けることを望むだろう。

何故なら、彼女が調査兵として薬学の勉強に励む今の理由は、壁外調査で傷ついた仲間たちの傷を癒すためなのだから。


残って欲しい気持ちと、安全な場所に居て欲しい気持ち……正反対の二つの気持ちが混ざり、絡み合い、複雑な感情が心を支配していた。
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