Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第18章 分かれ道
「そうですね……では、貴方の気持ちに添って説明しましょうか」
「あ?」
「貴方があの子に惹かれ求めているように、私も惹かれるものがり、それを求めているということです」
「っ!?」
ファティマの発言に、ギクリとリヴァイの胸が嫌な音を立てる。
どうやら見透かされているらしい。リヴァイがエミリに好意を抱いているということを……
「見ていればわかります。意外ですわ。人類最強の兵士とまでいわれている貴方が、あの少女に想いを寄せているだなんて。
そして、それが答えのようなものです。貴方ほどの人間が彼女に恋したように、ね」
薬剤師の最高責任者であるファティマをも惹き付けたエミリの魅力とその大きさ。
リヴァイの好意と形は違えど、エミリに何かを感じ引き寄せられたという点は同じ。
つまり、ファティマがエミリを求める理由など、それで納得しろとファティマは言っているのだ。
ファティマというこの女性は、一体何者なのだろうか。
リヴァイの中で彼女が謎の存在へと化していく。
そして、一つはっきりしたこともあった。
(ああ、そうか。どうやら俺は年寄りってのが苦手らしい……)
あの全て見透かしたような眼差しが、考えていることも心の中も読まれているようで気味が悪かった。
エミリに対する恋心を自覚する切っ掛けを与えたのだってピクシスだ。
加えて、会って数分しか経っていない、ましてや話もしていないファティマにまでそれを見抜かれるなど、思いもよらなかった。
年の功にはリヴァイにも勝てないものがあるらしい。自分の弱点らしきものを発見し、そして酷く落胆する。
「さて、すみませんが、私はこれからエルヴィン団長と二人で話をしたいことがあるので、リヴァイ兵士長とハンジ分隊長には下がって頂いてもよろしいでしょうか?」
再び突然の要求を強いられ、リヴァイはチラリとエルヴィンに視線を寄越す。
それに気づいたエルヴィンは、首を縦に振った。これはファティマに従え、という合図だ。
一つ溜息を吐いたリヴァイは、未だに困惑状態のハンジの後ろ襟を掴み、乱暴に扉を開けて部屋を出て行った。