Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第18章 分かれ道
(……そっか……)
そこで一つ気づいたことがある。
(わたし、やっと今……走り出すことができたんだ)
夢を見つけ、目標に向かうことが始まりではなかった。
薬剤師試験への挑戦、それこそが夢の始まりなのだということ。
戦いに挑む勇気と決意から、手を伸ばしても届かなかった結果に涙し、それに臆せず再び前を向いたその瞬間……それこそが、スタートラインから前へ踏み出したという証なのだ。
「……私、まだ始まったばかりなんですね」
「ええ、そうよ。そして、始まったばかりだからこそ、まだ引き返せる」
「……え」
ファティマから降りかかった、予想外の言葉。エミリの顔から笑みが消え、段々と深刻なものへ変わっていく。
それは、静かに話を聞いていたリヴァイたちも同じである。
「引き返せるって……どういう意味ですか?」
「貴女に薬剤師を目指すなと言っているわけではないわ。その逆よ」
逆とはつまり、薬剤師を目指し続けなさいということになる。しかし、それではどこか腑に落ちない。
もっと違う、別の意味を求めているように感じた。
答えがわからないまま、黙ってファティマの回答を待つ。
「エミリ、兵士を辞めなさい」
「…………っ!?」
突然、突きつけられたそれに、エミリたちは言葉が出なかった。
兵士を辞める。
そんなこと、エミリには考えられなかった。だからこそ、当然の反応。
一体何を言い出すのかと言いたげな顔で、全員がファティマに注目していた。
「……それ、どういう……」
「兵士を辞めて、私と一緒に来なさい」
「え」
また訳の分からないことを言い放つファティマに、冗談でも言っているのかと声を上げたくなるほどに動揺していた。
しかし、彼女の瞳は真剣そのもので、嘘や冗談を言っているようにはとても見えない。