Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第18章 分かれ道
真っ直ぐなエミリの思い。それは言葉となって、ファティマの心を一直線に貫いた。
淀みのない決意の篭った大きな瞳と真剣な表情、そして、力強い言葉。
エミリがどれだけ薬剤師という夢に大きな希望を抱いているのか、どれほど自分を取り巻く人間たちを大切に思っているのかが伝わってくる。
そこから感じるエミリの大きな可能性。それをこのまま開花させずに終わらせることなどできるはずがない。
(エミリ、やはり私の目に狂いはなかった)
追い詰められてもなお突き進もうとするその強い信念に、ファティマはここへ来て初めて頬を緩めた。
笑みを見せるファティマに、その場にいる全員が驚愕する。
「……あの、」
「エミリ、これを見てみなさい」
戸惑いを見せるエミリの言葉を遮り、ファティマが机に広げたものは、一次と二次試験のエミリの解答用紙だった。
「これを見ればわかるわ。貴女が、この前私が言ったことをしっかりと理解し、勉強方法を変えたのだと言うことが」
「……え」
「試験用に難しく作られているけど、基本的な問題が七割ほどの一次試験は、正解率がとても高かった。
二次試験の問題だって、まず大前提として基礎がしっかり身についていなければ解けないようなものばかりだったの」
そこからファティマが言いたいことは何なのか。エミリは瞬時にそれを察した。
つまり、エミリが勉強法を基礎に変更したから、それが結果に繋がったということだ。
もし、ファティマの言葉を無視してあのまま応用問題を解き続けていれば、それこそ解ける問題も解けなかっただろうし、当然最終試験まで進むことはできなかっただろう。
「私が出したヒントから、ちゃんと答えを見つけることができたから、この結果があるのよ」
「……今の、結果?」
ファティマの言葉を受け止めたエミリは、自身の大きな瞳を揺らし、目の前で笑をたたえているファティマを見つめた。
ようやく、自分の努力が認められた気がした。
この気持ちを表現する言葉も術もわからないほどに、心の中は満たされていた。