Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第5章 壁外調査
「ペトラ、大丈夫?」
ふと、ペトラの顔色が優れないことに気づいたエミリが声を掛ける。
壁外を出て、初めて目にする巨人に恐怖を感じていた。それからもここに来るまで何度も巨人と戦闘になっただろう。心身ともに疲労が溜まっているはずだ。
エミリの気遣いの言葉に、ペトラは疲れたように微笑み、大丈夫と返すも全然そうには見えなかった。
「15分後、調査を再開する! 全員、準備を整えておけ!」
上官からの指示に、再び緊張感に包まれた。
エミリ達は馬の餌を補給所へ戻そうと樽を持ち上げた。
今の所、大きな怪我を負っている者も死者も見られないが、それも兵達の体力と気力の問題だ。
「リノ、またよろしくね」
頭を撫でれば『ブルル……』と返事が返ってくる。
ずっと小屋の中にいたリノは、他の馬と比べて体力もスピードも若干劣ってはいたが、出会ってから毎日乗馬場で走り回っていたためか、今では当初の頃とは比べ物にならないほど速く走れるようになっていた。
「調査を再開する! 続け!!」
エルヴィンの掛け声に、兵達は馬を走らせ後に続く。
向かうは巨大樹の森、そこを抜けたところに第二拠点がある。
巨大樹の森は、立体機動を活かすには最適な場所だ。しかし、その名の通り巨大な樹木は太陽の光を遮断する。視界が暗くなるのだ。それに加えて、草原と違いここは森、巨人の姿を見つけることが難しくなる。
木々が揺れる音、風の音、いつも心地よく聞こえる筈の自然の音楽が、今はとても不気味に思えた。
「前方より二体、こちらに向かっています!!」
兵士の声に、全員が前を向く。
10m以上はありそうな巨人二体が、こちらへ向かって走っていた。
「左後方からも、三体!!」
続く巨人出現の報せに、兵士達は緊張と不安に覆われる。
計五体、その内三体は奇行種という最悪な事態が襲ってきた。