Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第5章 壁外調査
途中、また何体か巨人と遭遇したが、ハンジ班は全員無事で第一拠点へ到着することが出来た。
待機命令を出され、エミリはリノに水を与えながらフィデリオ達の姿を探す。しかし、見当たらない。まだ着いていないだけなのか、それとも……
不安が込み上げ、エミリは胸を押える。
「エミリ!!」
「!」
ペトラの声が聞こえた。
はっとして顔を上げれば、目に入ったのはこちらへ大きく手を振り駆け寄ってくるペトラ。そして、その後ろにはフィデリオとオルオの姿があった。
「みんな……」
声がかすれる。
まだ壁外調査は終わっていないが、傷一つ無い友人達の姿に一先ず安堵した。
「良かった。無事だったんだ……」
「エミリこそ!」
ペトラと手を取り合って笑い合う。
調査兵団に入ってからの二ヶ月は、ペトラと過ごす時間が増えたためか、彼女が隣にいないと思うと何故かとても違和感があった。しかし、それ程ペトラとの仲が縮まったと思うと嬉しい反面、こうして壁外に出る時は不安で仕方が無い。
「おい! お前らなぁ、俺らのこと忘れんじゃねーよ!!」
「っとに、女って男の扱い酷いよな」
ペトラと再会を喜び合っていると、そこにフィデリオとオルオが口を挟む。
勿論、エミリとペトラは、もう少し空気を読めないのか、と目を半眼にして二人をじっ……と見た。
「何だよ! その目はっ……ぶっ」
「おい、オルオ!! しっかりしろ!!」
彼女達の表情に不満を持ったオルオが再び声を上げ、そしていつものように舌を噛んでしゃがみ込む。フィデリオは、駆け寄りオルオにハンカチを差し出しているがエミリとペトラは更に呆れた表情だ。
「これあれだよね、告白する時とか失敗する感じのやつよね」
「オルオっていつもそうなのよねぇ。肝心な時に決まらないんだから」
「ほい! はへよ!!」
「おい! 待てよ!!」
喋りながら方向転換する二人に、取り残された男コンビは喚くように声を上げる。痛さに上手く呂律が回らないオルオに代わってフィデリオが翻訳するが、二人にとってはもうどうでもいいこと。
「わざわざ訳さなくても分かるわよ」
「ホント」
騒がしい男共の声を背に、二人は愛馬の元へ歩いて行った。