Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第18章 分かれ道
「来年の試験合格を目標にしているのは確かです。だけど、そのためには今のままじゃダメだってことは……わかっています」
これまでと同じように勉強を進めれば、必ず合格できるという確証はない。
また、調査兵団に所属しているため、いつ大きな怪我を負って勉強すらできない体になるかわからない。
そう、エミリに立ち止まっている時間など無いのだ。
「……そこまでわかっていて、まだ薬剤師を目指すというのね。どうして薬剤師になることに、それほどまで執着しているのかしら」
降り注ぐ言葉の刃。
容赦のないファティマの一撃は、エミリの心に確かな衝撃を与えていた。
それでも、エミリは折れることなく顔を上げ、ファティマを捉える。
「……それが私の、戦い方だって思ったからです」
理解されなくてもいい。
それでもいいから、せめてこの思いだけは聞いてほしい。
その一心で、言葉を紡いでいく。
「私は、いつも皆に支えてもらってばかりで……その癖に特に何も返せていません。私は、皆がくれる優しさに、ちゃんと恩返ししたいんです」
不安な時は、必ず親友たちが寄り添ってくれる。
挫けそうになった時は、いつだって素敵な上官たちが手を引いてくれる。
涙を流す時は、リヴァイが頭を撫で、そして抱き締めてくれる。
「だから……もしかしたら、この夢はただの自己満足なのかもしれません」
そうだとしても、何も出来ない自分の弱さが嫌い。
何か恩返しをしたい。
いつも支えてくれる皆に、たくさんの感謝を届けたい。
「薬剤師になることは、私の夢です。だけどそれ以上に、私は薬剤師になって、皆の力になりたいんです。
いつも皆がくれる温かさや優しさを、ちゃんと自分の力にして返したい。
……だから、私は誰に何と言われようとも、この夢を諦めるつもりはありません」
何より、今ここで止めてしまえば、それこそこれまでやってきたことが無駄になってしまうから。
挫けたって、また前を向いて進むと誓ったから。
ファティマに、止めておきなさいと言われたとしても、絶対にその言葉に従うつもりはない。