Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第18章 分かれ道
「彼女……エミリと話をするためです。色々と言いたいことや聞きたいことがあったものですから」
無表情で探るようにエミリを見つめる白髪の老婆は、鞄の中から封筒を一つ取り出しエミリの前へ滑らせた。
「……これは?」
説明もなく差し出された封筒に、エミリは首を傾ける。
封筒のサイズは大きめでかなり分厚い。一体、中に何が入っているのだろうか。
「先日の試験の貴女の成績よ。解答用紙も入っているわ」
「えっ」
予想外の代物にエミリは再び動揺を見せる。
受験者に知らされるのは、合否のみだ。
それなのに何故、ファティマはわざわざ自ら調査兵団へ足を運び、エミリの成績を渡したのか。
彼女の行動の意味がわからなかった。
「…………開けても、よろしいですか?」
「えぇ」
恐る恐る封筒に手を伸ばし封を開ける。中に入ってある大量の用紙を取り出し、一枚ずつ確認していった。
成績表には、一次から最終試験までのエミリの点数が記されている。それだけでなく、全体の平均点や順位なども載せられていた。
一通りザッとそれらを目に通したエミリは、再びファティマに向き直る。
「…………どうして、私にこれを……?」
こうして確認しても、やはりファティマの目的はわからない。
そろそろ理由を教えてほしくて質問するが、彼女は答える気がないのか、ただ紅茶を味わっていた。
「あのっ」
「この前、私が貴女に言ったこと……覚えているかしら?」
口を開いたファティマが発したものは、エミリの質問に対する答えではなかった。
エミリの問いとはあまり関連性のなさそうなファティマからの質問に、エミリは動揺しながらも答えを考える。
「……あの、それってもしかして、『今のやり方では、試験には合格できない』という……」
「ええ、そうよ。それで、どうだったかしら? 今回の結果は」
ファティマの言葉に、ドキリと心に鋭い何かが突き刺さる。それを感じながらも、エミリはどう答えればいいのかわからなかった。