Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第18章 分かれ道
「団長、エミリです」
団長室の扉を数回ノックし、その向こうに来客者と待っているであろうエルヴィンに声をかける。
その直後、バタンと大きな音と共に勢いよく扉が開けられ、エミリはビクリと肩を揺らした。
「エミリ! 待ってたよ!!」
顔を出したのは意外にもハンジだった。慌てた様子で早く部屋に入るようエミリを急かす。
一体何をそんなに必死になっているのだろうか。訳も分からずハンジに促され、「失礼します」と団長室に足を踏み入れた。
そして、おそらく例の来客者であろう者を目に映したエミリは、一瞬、息をとめてその人を見つめていた。
「久しぶりね、エミリ」
「…………ファティマ、せんせ……」
彼女を見るのは最終試験以来、そして、こうして会話を交わすのは、願書を貰いに王都へ出かけたあの日以来だ。
何故、彼女がここにいるのか。何が目的なのか。理由がわからなくて、エミリは困惑した表情で出された紅茶を優雅に飲んでいるファティマの顔を凝視していた。
「エミリ、とにかく座りなさい。ファティマさんが君に話があるようだ」
そこでエルヴィンに声をかけられたエミリは、ハッとしたファティマの向かいのソファへ視線を移す。そこには、ハンジだけでなくリヴァイも険しい表情で腰掛けていた。
「話が進まねぇ。さっさと座れ」
「あ、はい……」
いつもと比べ、リヴァイの機嫌が少し悪いように見える。その理由はよくわからないが、おそらくファティマのことをあまり歓迎していないのだろうと推測した。
リヴァイの隣に腰を下ろし、遠慮がちに真向かいに座るファティマを見つめる。
全員が席に着いたのを確認したエルヴィンが、静かに切り出した。
「本日はどのようなご要件でいらしたのでしょうか」
エルヴィンから当然の質問を繰り出されたファティマは、ティーカップをソーサーの上に戻し、視線をエミリに固定させながら口を開いた。