Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第18章 分かれ道
最終試験の結果が届いてから数週間が経ち、あっという間に3月がやって来た。
リノとヴァルトに餌を与えていたエミリは、グッと伸びをして空を仰ぐ。
試験の結果は予想通り、不合格だった。
時間内に課題すら完成できなかったのだから、当然の結果だろう。
少し悔しい気持ちはあった。それでも、最終試験を終えた後ほど苦しくはなかった。
逆に心に芽生えたのは、来年また受験して次こそ受かってみせるという新たな目標。
夢は簡単に叶えられるものじゃないと、改めて痛感した。そして、また一回り成長できた気がする。
今回の挑戦は、きっと未来の自分のためになるものだと確信した。
「エミリ、いた!」
一人で物思いに耽っていると、突然誰かに声をかけられ意識を現実へ引き戻す。
兵舎から大きく手を振ってこちらへ駆けてくるのは、二ファだった。
「二ファさん? どうかされたんですか?」
「エミリにお客さんが来たから団長室に来るよう伝えてほしいって、ハンジさんに言われたの」
「……お客さん?」
自分を訪ねにやって来る知り合いなどいただろうか。しかも、団長室へ通されるほどの人物となると、それなりに権力がありそうな者だ。
(考えられるのは、ホフマン家の人たちだけど……)
脳裏にエーベルやシュテフィのことを思い浮かべる。しかし、彼らが調査兵団へやって来るのなら、事前に手紙で教えてくれるはずだ。
なら一体誰なのだろうか。
リノとヴァルトにいい子で待っているよう言い聞かせ、エミリは首を捻りながら二ファと共に団長室へ向かった。