Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第17章 未練
感情に身を任せて大泣きしたエミリの目元や頬は赤くなっていた。
けれどそのお陰で、我慢していた時とは比べ物にならないほど心はかなり楽になった。
「ほら」
「……ありがと、ございます」
リヴァイにハンカチを差し出され、それを受け取り濡れた目元や頬を拭う。
ハンカチから、ふわりと優しい石鹸の香りが鼻をくすぐり、また気持ちが落ち着いた。
「ったく、そんなになるくらいなら、最初から強がんじゃねぇよ。馬鹿が」
ハンカチで目元を抑えているエミリの頭にぽんぽんと手を乗せるリヴァイの手は、ぶっきらぼうな言葉とは裏腹にとても優しくて、温かかった。
「すみません」
「俺は別に謝罪の言葉が聞きたいわけじゃねぇよ」
「……えへへ。ありがとうございます」
いつもこうして気にかけてくれるリヴァイの優しさが、とても嬉しい。
不思議なことに彼の前では、涙を流してしまうようになってしまった。
どんなに強がっても、それはリヴァイの前では通用しない。
それが何だか恥ずかしくて……だけど、心地よくもあった。
「……あの、前から気になっていたんですけど」
いつもより、少しだけ心臓の音がうるさい。
緊張を紛らわすために、胸元でギュッとリヴァイのハンカチを握りしめ、隣に立つリヴァイの顔を真っ直ぐと見つめた。
「どうして……兵長はいつも、私にここまでして下さるんですか?」
ずっと気になって仕方がなかった。
どうして兵士長であるリヴァイが、一介の兵士である自分をいつも気にかけ、寄り添ってくれるのか。
今回だけでなく、失恋した時、訓練兵時代の話をした時、いつだってエミリが涙を流す切っ掛けをくれたのは、リヴァイだった。
壁外調査で行方不明になった時だって、一人でエミリを探しに駆けつけてくれた。
何故、そこまでしてくれるのか……
リヴァイの気持ちに気づいていないエミリは、それがわからない。