Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第17章 未練
どうして今になって、こんなにも涙が流れるのだろう。
リヴァイにそんな無様な姿を見られたくなくて、手の甲で必死に拭う。それでも、涙は止まってくれない。
そうやってまだ意地を張ろうとするエミリを見てられなくて、思う存分泣いてほしくて、リヴァイは彼女の頭に優しく手を置いて、再び口を開いた。
「あと、もう少しだったな」
「…………もう、少し……」
そう、そうだ。
あともう少しだった。
最終試験を合格すれば薬剤師になれたんだ。
あと、一歩だったのに……
「…………うっ、うぅ……」
届かなかった。
すぐそこにあった目標に……届くことが、できなかった。
(…………くや、しい……悔しい!!)
ようやく、自分の本当の思いが言葉に変わった瞬間、もう我慢なんてできなかった。
ずっと、見て見ぬふりをしていた。
悔しさを感じてはいたが、それを心の中ですら言葉にすることはしなかった。
早く立ち直り、また前を向かなくてはという強がりから、悔しさを心が受け入れてくれなかった。
それも、いま、こうして受け止めることができたのは、リヴァイがエミリの気持ちを理解して、彼が先にその悔しさを受け入れてくれたから。
「…………くや、しっ……ううっ、うっ……ぐやし、い……うっああっ」
どんなに訓練が苦しくても、壁外調査で心が疲弊していても、自身の置かれている厳しい状況に耐えながら、たくさん……たくさん勉強した。
それでも、駄目だった。
(…………だけど、諦めたくない!!)
自分の大切な夢だから。
仲間の力になりたいから。
どれだけ大きな壁が立ち塞がったって、心が折れそうになったって、ここで終わりたくはないから。
生きている限り、何度だって……────
本を強く胸に抱き締めその場にしゃがみ込み、嗚咽を漏らしながら大粒の涙を流し続けるエミリ。
そんな彼女の背中をリヴァイは優しく摩り、彼女が落ち着くまで、ずっと隣に寄り添っていた。