Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第17章 未練
「エミリ……どう、だった?」
いつもであれば元気な声で「ただいま!」と帰ってくるはずなのに、何故か今日だけはそうではなかった。
顔を合わせてからずっと無表情なエミリ。朝とは全く正反対の様子に、ペトラたちは大きな胸騒ぎを感じた。
「…………エミリ?」
ペトラが話しかけても、口を開くどころか顔を合わせようともしない。
そんな彼女が心配で手を握ろうと自分の腕を動かそうとした時だった。
「…………ごめん……」
弱々しい、小さな声でようやく発せられた謝罪の言葉。
それを聞いた瞬間、その言葉が何を意味しているのかを、ペトラたちは瞬時に理解した。
「…………間に、あわなかったの……」
「……え」
「…………時間内に……課題を、作りおえることが……できなかった……」
さらに顔を俯かせながら、肩を震わせて絞り出されるその声から感じられる、エミリの悔しさ。
強く拳を握り、必死にそれを耐えていた。
「…………ほんとに……ごめん、なさい……」
あんなに応援してくれたのに、支えてくれたのに、それなのに、何も結果を出せなかった自分が情けなくて仕方がない。
「…………ぜったい、受かるって……言った、のに……」
結局はそれも口だけだった。
そんな自分が恥ずかしくて、皆に顔向けできなかった。
「……ごめん……」
そんなエミリの様子に、言葉に、何と声をかけてあげれば良いのかわからなくて、ペトラたちは、目の前で俯くエミリを見ていることしかできなかった。
重たい空気がエミリたちを包み込む。しかし、
「エミリ」
それをものともしないハンジは、エミリの真正面に立ち、いつもの明るい声で名を呼ぶ。
そして、勢いよく両手をエミリの両肩に乗せた。
ビクリと肩を揺らすエミリは、何を言われるのかと縮こまったまま、やはり顔を上げようとしない。
そんな彼女に小さく微笑んだハンジは、ゆっくりと口を開いた。