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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第17章 未練




「解毒剤と漢方、か……」


講堂を出たエミリは、薬草園を歩きながら試験の課題について考えていた。

特に頭を悩ますのは、二つ目の課題である漢方の方だ。

薬の形状だけでなく効能も自由と提示されたわけだが、まず簡単に作ることができるようなものはどれも却下である。

最終試験なのだから、それに相応しい難易度のものを作り上げなければならない。

しかし、難しすぎるのも問題なのである。
エミリは、そこまで技術が追いついていないからだ。

この日まで、ほとんど初歩の勉強や特訓に勤しんでいたため、応用を身につける時間が無かったのだ。


(……でも、やるしかないよね……)


漢方といえば、再び薬剤師を目指すきっかけとなった、壁外調査の時に作ったものを思い出す。

一応、あの薬は成功と収められたわけだが、同じものを作って合格しても、それは自分の力にはならないだろうとこれも却下した。


(……何か別の薬を作れないかな……?)


そもそも漢方自体、それに関する情報がまだまだ少ない。
漢方は東洋から伝わったものだ。つまり、壁の外の世界から伝わったものであるということ。

そう、漢方薬は、本来であれば人類の掟に反するものなのである。
しかし、人類の医療発達を考慮した王政によって、漢方薬は処罰の対象外となったのだ。

そのような特殊な方法で壁内人類に残された漢方についての情報数は、未だに多いとは言えないのである。

数少ない種類の中からどの薬を作るべきなのか。
なかなか決まらず、エミリの頭はパンク寸前だった。

そして鳴り響く腹の虫。


「……お弁当食べよう」


今朝、ペトラたちが作ってくれた弁当を食べるため、ベンチに腰掛ける。
蓋を開ければ、そこには美味しそうなサンドイッチが詰められていた。


「いただきます!」


一口食べれば、あまりの美味しさにエミリの顔は自然と笑顔になる。

そして、心のこもった弁当を食べたことで、エミリの肩に入っていた力がスッと抜けていった。


「……悩んだって仕方ないよね」


試験でも同じだ。今、自分ができることをするしかない。

風に吹かれて揺れる薬草を見つめながらサンドイッチを頬張るエミリの中には、大きな覚悟が宿っていた。
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