Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第17章 未練
最終試験の朝、ランニングを終え顔を洗ったエミリは、鏡に映る自分を真っ直ぐと見据えた。
自分でも強く感じ取れるほどの真剣な顔に、程よい緊張感と合格したいという強い思いが湧き上がる。
(ここまで来たんだ……絶対に合格してみせる)
何のために努力してきたのか。それを一番分かっているのは自分だ。
ただ真っ直ぐに目標に向かって突き進んできた自分のためにも、そして、隣で優しく励ましてくれた仲間たちのためにも、何がなんでも試験に合格したい。
身支度を済ませ、食堂で朝食を食べ終えたエミリは、停車している馬車で王都にある試験会場へ移動するため、兵舎の正門へ向かう。
そこに固まっている集団に、エミリは足を止めた。
(あれは……ペトラたち?)
馬車の前に集まっていたのは、一次試験の時と同じくペトラやオルオ、エルヴィン、リヴァイ、ハンジ、ミケ、モブリットらハンジ班やリヴァイ班、ミケ班のメンバーが居た。それ以外にも、エミリと関わったことのある兵士たちが集っている。
「あ、エミリ! 待ってたよ!!」
兵舎の出入口から彼らを眺めていると、それに気づいたペトラが大きく手を振ってエミリに声を掛ける。
「皆、どうして……」
「見送りに決まってるでしょ!! ほら、こっちこっち!!」
ペトラの呼び掛けにハッとしたエミリは、急ぎ足で皆がいる場所へ駆け寄った。
そして、見知った顔が一人いないことに気づく。
「……あれ、フィデリオは?」
「あいつならまだ寝てる」
「え」
エミリの疑問に答えたオルオの回答に、エミリの頭に再びクエッションマークが浮かんだ。
一番来ていてもおかしくない人物がなぜいないのだろう。しかも寝ているとはどういうことだと抗議したい気分だ。
「まあ、それだけエミリのこと信じてるってことじゃない?」
眉を寄せるエミリに、咄嗟にペトラがフォローを入れたが、エミリは納得のいっていない表情だった。