Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第1章 その日
ドォ!! ビビッ!!
「「!?」」
突然、地響きにも似た大きな音と共に地面が揺れた。
エミリはバランスを崩して後ろに倒れそうになるもフィデリオが支え転ばずに済んだ。急な出来事に二人は口論を止め、顔を見合わせた。
「なに、今の……」
「地震……にしては、何か妙だな」
「ねぇ……今壁の向こうで何か光らなかった……?」
この妙な現象が起きるコンマ数秒程前に、雷のようなものが落ちた気がしたが、気の所為だろうか。しかし、この胸騒ぎは何だとエミリは胸を抑える。
「様子が変だな」
「え?」
フィデリオの言葉にエミリは顔を上げる。周囲を見渡せば既に人はいない。噴水のある広間に出ていた。しかもそれだけではない。全員が同じ方向を見上げている。
「……行ってみよう」
「あぁ!」
駆け足で皆がいる場所へと向かう。彼らと同じ方向を見上げると、壁の向こうには大きく煙が上っていた。そして、その壁には、"大きな手"が掛けられていた。
「………おいおい、うそだろ」
「アレって……」
壁の外に徘徊している謎の生物。そしてあの大きな手を見れば、その正体は簡単に予想がつく。
ただ信じられないことは、"ヤツ"がこの50mの壁を越える程巨大なモノかもしれないということ。
そして、ヤツは姿を現した。
「…………巨人だ」
壁から顔を覗かせる巨人に、誰もが信じられないといった表情をする。
巨人は、最大でも15mと確認されている。とうとう、この50mの壁を越える巨人が現れた。現れてしまった。
再び大きな破壊音が鳴り響く。
「ヤッベ……! エミリ、下がれ!!」
「え!?」
この破壊音は壁を壊された音。つまり、壁に穴を開けられたということ。
その衝撃で壁の大きな破片が、石つぶてとなって人々を襲う。
家が壊され、無力な人間はなす術なく瓦礫の下敷きとなっていく。
その光景は、まるで地獄のようだった。