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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第1章 その日



今日もいつもと変わらぬ厳しい訓練を終え、エミリは手早く身支度を整えて訓練所を出た。早く家族に会いたい。その一心で足早に歩く。
しかし、エミリはふと疑問に思ったことがあったため、一旦足を止めた。


「……何であんたまで着いてくんのよ、フィデリオ!」

「声デケェよ……」


後ろからトコトコと着いてくる青年の方へ振り向き怒鳴る。
このフィデリオ・コストナーという少年は、エミリの幼馴染だ。彼女が五つの時から共に過ごすことが多くなり、現在に至る。
歳は彼の方が一つ上だが、たまに衝動的になるエミリのことが心配で同じ年に兵士を志願したのだ。


「ったく、何で実家でまであんたのお守りしなきゃなんないのよ」

「どっちがだよ。いつも面倒見てやってんのは俺の方だろうが」

「何ですって!!」


そうして二人は下らない口論を始める。
この二人は、実は幼馴染でありながらも犬猿の仲で、毎日顔を合わせると決まってどこかで衝突し合う。
しかし、非常時はこの二人、とてつもなく息がぴったりなのだ。正に喧嘩するほど仲がいい、という言葉が似合う。


「ま、そうカッカッするなよ。俺も久しぶりにエレンに会いたいしな。訓練兵になってから全然会ってねぇからな」

「……あんたみたいなのにエレンを会わせるわけないでしょ」

「エレンがお前より俺に懐いてるからってヤキモチ妬いてんじゃねーよ。バーカ」


フィデリオの言葉にエミリの中でブチッと何かが切れる音がした。

エレンは、男同士だからなのかフィデリオをよく慕っていた。勿論、弟大好きなエミリには我慢ならない。というか、エミリがフィデリオによく喧嘩を売っているのは案外エレン絡みだったりする。


「うっさい! ハゲ!」

「ハゲてねーよ!!」


訓練所では二人を止めてくれる友人がいるが、今はそこに居合わせていない為にほとぼりが冷めるまでこの口論は続くのだろう。そう思っていた。

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