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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第17章 未練




「エミリ、君はまだ背負わなくていい。その役目は俺たちがするから、君はただ目標に向かって突き進んでくれ」

「モブリットさん……」


使命も仲間の命も人類も、その責任を背負うのは上官の務め。
部下たちは、その後ろを着いて来てくれるだけで……それだけでいい。

だからエミリにもそうしてほしい。
それがハンジやモブリットたちの思いだった。


エミリはモブリットの思いを感じ取り、二人で微笑み合っていると、空気の読めない上官がガシャンと大きな音を立てて酒瓶を机に置いた。


「お待たせ〜!! 酒はコレとコレと……あと、コレにしたよ!!」


「ジャーン!」と声を上げながら酒瓶を掲げるハンジ。
そんな上官を真顔で見上げるエミリとモブリット。

反応の薄い部下二人に、ハンジは「あれ?」と首を傾げた。


「二人とも、どうしたの? ほら、酒だよ酒! エミリもほらほら飲もう!!」

「ちょっと待って下さい分隊長!! あんたエミリに飲ませる気ですか!?」

「もちろん!!」

「何言ってんですか!! エミリは、明日試験なんですよ!? さすがに酒を飲ませるわけにはいきません!!」


ドヤ顔で親指を立てるハンジに、モブリットはいつものようにキレの良いツッコミを入れ続ける。

そんな上官二人の漫才を眺めるエミリは、とても遠い目をしていた。


「あの、これは……」


そして、上官二人から後ろへ振り返る。そこには、息を潜めて遠くからやり取りを静観していた二ファたちの姿があった。

エミリにバレてギクリと肩を揺らし、申し訳なさそうな顔をしてぞろぞろと出てくる。


「まあまあ、そう気を落とすな! な?」


またもやげっそりとした表情を見せるエミリの肩に、ケイジが腕を回し宥めている。

試験を控えているエミリに酒を飲ませようとしているハンジは、果たして本当に息抜きさせるのを目的で連れ出したのだろうか。


「ほら、分隊長もわざとあんな風に暴走してるのかもしれないし……多分」


そんな二ファの微妙な単語に、エミリら四人は未だに続いている漫才をただただ傍観していたのであった。
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