Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第17章 未練
そんなこんなでハンジ班一行は、またもや訳の分からないハンジの暴走に付き合わされ街へ出ていた。
行先は、エミリが前から行ってみたいと言っていたレストラン。さきほどのエミリとの会話の中で、ハンジが言った通りの場所となった。
店に着いた途端、高値の料理を次々と注文していくハンジ。彼女以外のハンジ班の班員たちは、もう勝手にしてくれとでも言わんばかりの顔で、静かに水を飲んでいた。
「ちょっとちょっと〜皆静か過ぎない? もっとはしゃごう!! ね?」
「いえ、あの……」
「ああ! あの酒とか美味しそうじゃない!? うおーー試飲出来るんだって!! 行ってくる!!」
店員さ〜んとぴょんぴょん飛ぶように叫んで走っていくハンジに、もう少し落ち着いて歩けないのかとエミリは目を半眼にして、自分の上官の姿を眺めていた。
「はぁ……なんでこんなことに……」
本来であれば、悠長に食事をしている場合ではない。明日の二次試験に向けて、少しでも参考書と睨めっこしたいというのに……
エミリは今日一番の長い溜息を吐き出した。
「相変わらずだな。分隊長は……」
そこへ、エミリの向かい側に座っているゴーグル(あだ名)が、ハンジを見ながらやれやれと苦笑を浮かべている。しかし、その表情はどこか嬉しそうだ。
「確かに、普通に言えばいいことなんだがな……まあ、分隊長らしいか」
そんなゴーグルの話に同調するのは、彼の隣に腰を下ろしているケイジだった。彼も困った顔を浮かべながらも楽しげな表情である。
「あの……どういうことですか?」
「ふふ、エミリは知らない方が逆に良いかもね!」
二人の会話の意味が理解できずに問い質せば、二ファまでもが含みのある言葉と笑みを見せる。
「二ファさんまで……」
「俺はちょっくらトイレにでも行ってくる」
「ああ〜……じゃあ俺は、試飲してくる。実はあの酒俺も気になっててな」
「じゃあ私は、デザートでも見に行こうかな」
ケイジ、ゴーグル、二ファが三人同時に席を立ち、そのままそれぞれ発言した場所へ行ってしまった。
その場に取り残されたのは、エミリとモブリットのみとなった。