Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第17章 未練
「だから、思うんです……亡くなった人たちの思いの強さが、星の輝きに表れているのかもって」
後悔の念が大きければ大きいほど、星は強く、鈍く輝く。
この世で幸せを感じた分だけ、星は明るく、眩い光を放つ。
同じ人間などいない。皆違う人間だから……あんなにも無数に存在している星は、みんなそれぞれ輝きが違うのかもしれない。
「だから、輝く理由もみんな違うのかも……って、なんかこれもメルヘンチックといいますか。なんか、一つの奇跡みたいなお話ですね」
「……いや、案外その通りかもな」
「へ……?」
リヴァイが、ふと考えることがある。
なぜ星はこんなにも美しいと思えるのか。
調査兵団へ入団し、初めて壁の外に出る前もかつての仲間と共に、こうして星を見上げた。
あの時は、地下街では見られなかった広い空を見ているだけで、自由になれたと少しだけ感じた。
けれど、あの時と今の感じ方は全く違う。
今では星を見ていると、美しいと思う反面どこか切ない気持ちが顔を出していた。
そう感じられるのは、もしかしたら、部下たちの意志をその星から感じ取っていたからなのかもしれない。
エミリの話を聞いて、そう思った。
「……あいつらは、毎日ああやって星となって、俺たちに語りかけてんだろうな」
”必ず人類に自由をもたらしてくれ”
”どうか、自分たちの意志を継いでくれ”
自分たちの未練と生きている者たちへの激励を、星となって輝きを放つことで伝え続けているのだと。
「……そうですね。だからこそ、私は何としてでも薬剤師になってみせます」
それが人類の力になると、信じているから。
「星に願わなくてもいいのか」
「必要ないです。願い事も、神頼みもしません。自分の夢は、自分の力で叶えてみせます!!」
そうでなくては意味がない。
それに何より、奇跡よりも自分を信じたい。
「そうか」
「あ、それと……私、奇跡は信じていませんが、夢見てはいます」
いつかこの世界も、たくさんの奇跡で溢れる素敵な世界になってほしい。そうして、皆に幸せでいてほしいと思うから。
「だから必ず、夢を叶えてみせます」
一週間後、再びそう誓ったエミリの元に届いたのは、一次試験合格の通知だった。