Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第17章 未練
「…………流れ星の言い伝えってやつも、案外本当かもしれねぇな」
空を仰ぎながら、ポツリと小さな声で呟く。
「兵長? いま何か言いました?」
リヴァイのすぐ隣にいたエミリは、その小さな声を少しだけ耳で拾い、不思議そうにリヴァイの顔を覗き込む。
「……いや、何でもねぇ」
「そうですか。うーん……空耳かなぁ」
そのように思い込んだエミリは、特に気にする様子もなく、ふわぁと大きな欠伸をした。
今、こうしてエミリと共にいるリヴァイの願い。それは、”もっとエミリと過ごす時間がほしい”だった。
ケーキを奢ってやる約束をしたことで、エミリとの時間が増えたのだから、願いが叶ったと考えて良いだろう。
エミリのように声に出して3回唱えたわけでもない。
けれど、願い事というものは、誰にも教えることなく自分の胸の内に閉まっておいた方が良いともよく言われている。
(……こんなことを考える俺も、こいつと同じでガキなのかもしれねぇな。いや……以前の俺は、こんな言い伝えなんざ、耳にすら入れようとしなかった)
地下街で生まれ育ったリヴァイにとって、奇跡といった類の御伽や言い伝えは、胸糞が悪いと思えるようなものだった。
しかし、エミリと出会ってからは、あまりそれらに対して拒絶することは殆ど無くなったかもしれない。
いや、正確には、彼女が語るものだから、聞き入れようと思えるのだろう。
「……なぁ、エミリ。お前は……奇跡ってもんを信じてるか」
「え……えっと、いきなりどうしたんですか?」
「流れ星の言い伝えを聞いて少し気になっただけだ」
「……うーん……そうですねぇ」
空を見上げ続けるリヴァイに倣って、エミリも空へ顔を上げながら考え込む。