Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第17章 未練
「それで、その願いをどうやって叶えるつもりだ」
さっきエミリが自分で言った通り、彼女の給料で食べ放題に行くのは限界があるだろう。
なら、市場の福引きでケーキの食べ放題券でも入手する予定なのだろうか。そもそもそんなものがあるのか。
もしくは誰かに奢ってもらうか、になるわけだが……
「兵長が奢って下されば私の願い事は叶います」
「おい」
さらりと自分の上司に向かって要求をしてくる辺り、かなり度胸がある方ではと感心してしまう。例え冗談でも、だ。
「冗談です!」
そんな冗談を言うエミリは、とても楽しげな表情でそこから彼女の茶目っ気が滲み出ている。
きっと、自分の大好きな弟たちに対してはいつもこんな感じなのだろうと、不思議と容易に想像がついた。
しかし、このままではエミリに一本取られたような感じがして後味が悪い。
「…………奢ってやる」
「え?」
「だから、奢ってやるっつってんだ。試験が終わった後にでもな」
その言葉にエミリは、キョトンと呆けた顔を見せたが、すぐに頬をほんのり赤く染めて嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「ホントにいいんですか!? 兵長も冗談とか言いませんよね?」
「ああ、嘘じゃねぇよ。だから、試験がんばれよ」
「はい!! やった〜」
ちょっとした仕返しのつもりで言った言葉だが、発言した後にリヴァイは、これでは結局エミリの思うがままであることに気づいた。
(……まあ、いいか)
隣ではエミリが、「ケーキ、ケーキ〜!!」と楽しそうに呟きながら毛布に包まっている。
そんな想い人の幸せそうな笑顔が見られるのであれば、ケーキくらい奢ってやってもいいと思えた。
そして何より、これは二人きりで出かける絶好の機会だ。
そこまで考えてリヴァイは、あることに気づいた。