Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第17章 未練
「あ、ほら!! また光りましたよ!! 兵長ちゃんと見ました!?」
「ああ、見た。だからお前は落ち着け」
流れ星を見られたことがそんなに嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべてはしゃぐエミリを宥める。
初めて見た流れ星は、とても一瞬なものだった。スッと白い光の線が突然現れたと思いきや、すぐに消えて無くなってしまった。
呆気ない。しかし、その一瞬の輝きがとても幻想的で美しかった。
「あ、そうだ! 流れ星が消えるまでに、同じ願い事を3回唱えると願いが叶うって言い伝えがあるの知ってます?」
「いや、初耳だが……それ以前に、あんなクソ速ぇもんが消えるまでに願い事を3回も唱えるなんざ、普通に考えて無理だろ」
「……なんでそういう夢を壊すこと言うんですか」
至極真っ当なことを言ったリヴァイに対し、エミリは冷ややかな視線を隣から送っていた。
「そんな言い伝え信じてるお前がガキなだけだ」
「そんなことないです〜! ダメなら、叶えられる願い事を唱えれば問題ありません!」
「叶えられる願い事って……何だ、そりゃあ……」
「そうですねぇ、例えば……」
エミリは人差し指を顎に添え、「うーん」と真面目に考え出す。
一体どんな回答を出してくるのか、リヴァイは黙って待っていると、きらりと再び夜空に光の筋が現れたのを目の端で捉えた。
「あ! ケーキの食べ放題に行きたい。ケーキの食べ放題に行きたい。ケーキの」
「おい、もう手遅れだ。消えてる」
両手を顔の前で組んで早口で願い事を述べていくエミリの声を遮り、リヴァイはほら、と空へ指差す。
「えぇ〜……そんなぁ」
「だから無理だと言ったろうが。大体、ケーキの食べ放題に行きたいって何だ。どんな願い事だ。普通に叶えられるだろう」
「兵長ほどの人なら可能ですけどねぇ〜。私のような下級兵士には、ケーキの食べ放題なんて夢のまた夢なんですから!!」
どうしてもリヴァイに納得してほしいのか、夢という部分を強調している。
「どーせ兵長には理解できまんせんよ」と不貞腐れているエミリの頭に手を置いて、ご機嫌取りのためにポンポンと撫でてやった。