Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第17章 未練
「で、お前はこんなクソ寒い屋上に何しにきたんだ」
「気分転換です。なんか、寝る気分じゃなくて……兵長はどうしてですか?」
「単に俺は一人で酒を飲みたかっただけだ」
「え、そうだったんですか? なんかすみません……」
誰にでも一人でいたい時はある。
そんなことも知らずに一緒に毛布に入ろうなどと声を掛けてしまった。
リヴァイが一人で過ごしたいと思っているなら、毛布だけ預けて自分は戻った方が良いだろうか。
「えっと、なら私……部屋に戻りますね」
リヴァイに気を利かせ、毛布から出て立ち上がる。しかし強く腕を掴まれ、元のように隣に座らされた。
「わざわざお前が出て行く必要はねぇよ。ここにいろ」
「そう、ですか……では、お言葉に甘えて」
再び毛布を体に巻いて、リヴァイの隣に寄り添う。
正直に言えば、エミリでなかったらこのまま帰していただろうし、もしくは自分が引き返していた。
エミリだから、二人きりになりたくてこの場に留めた。
もちろん、そう思ったことはエミリには秘密だ。
「今日はもう勉強しねぇのか?」
「はい。フィデリオに休めって言われました」
「全くその通りだ。お前は加減を知らねぇからな」
フィデリオが何も言っていなかったら、エミリは勉強をしていたのだろう。
休むという考えも少しは持ってほしいと思う。
「あ、兵長!!」
酒瓶を傾けていると、隣からクイクイと服を引っ張られる。急に大きな声を上げて何事だろうとエミリが指さす方へ視線を移した。
「……空がどうかしたのか?」
「今、光ったんですよ!!」
「あ? そりゃあ星は光るもんだろうが」
「そうじゃなくてですねぇ……流れ星を見つけたんです!!」
流れ星というワードに、リヴァイは少しだけ目を見開く。
単語は聞いたことがあるが、流れ星自体を見たことがなかった。特に気にもしていなかったが、もし見られるのであれば、見てみたいとは思う。