Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第17章 未練
そこに、ガチャリと屋上の扉が開く音がした。それに反応し、振り返ったエミリの目に入ったのは、酒瓶を手にしたリヴァイの姿だった。
「……兵長?」
「ああ、エミリか。こんな所で何してる。風邪ひくぞ」
「大丈夫です。ちゃんと毛布持ってますから!! そういう兵長こそ、薄着じゃないですか」
羽織るものも何も持たず、部屋着のまま屋上に現れたリヴァイの格好は、見ているだけで寒そうだ。
「別に、寒さで風邪ひくほどやわじゃねぇよ」
リヴァイがそういうのだから、そうなのだろうが、それでもリヴァイに万が一のことがあっては困るのはエミリら部下たちだ。
「あ、そうだ。兵長、一緒に毛布に入ります?」
「……あ? お前、それ本気で言ってんのか……?」
「え? 私、何か変なこと言いました?」
そう言って片腕で毛布を広げるエミリに、呆れた視線を送る。
もう少し異性に対して意識と警戒を持つべきではないのかと突っ込みを入れたくなるが、エミリと共に毛布に包まって過ごすことができるなど、そんなチャンスは滅多に無い。
「兵長、入るなら早くしてください。寒いです!」
リヴァイの葛藤も露知らず、呑気に毛布をヒラヒラと揺らすエミリに苛立ちを覚えた。
もうどうなっても知るかと開き直り、リヴァイはエミリの隣に腰を下ろして毛布に包まった。
「あったかいですねぇ」
毛布の中で体が密着しているため、お互いの体温が伝わり、さっきよりも体の温度が上がっているのを感じる。
「お前、楽しそうだな」
「そうですか?」
「ああ。その様子だと、試験の調子はよかったらしいな」
「まあ、満点とかまでは行きませんけどねぇ……でも、手応えはありました!」
「そうか」
自信が無いよりずっと良い。
空を見上げるエミリの横顔を眺めながら、リヴァイは少し安心した。
普段、自分に自信が持てないエミリには、きっとそれくらいが丁度良いだろう。
エミリの温もりが伝わるのを感じながら、リヴァイは酒瓶の蓋を開けそれに口つける。