Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第16章 欠落
「エミリ、勉強してる……?」
真剣な表情で、ひたすら筆を走らせるエミリの姿に、ハンジたちは目を丸くした。
こんなにも集中して勉強に取り組む姿を見たのは、何日ぶりだろうか、と。
「どうやら、悩み事とやらは解決したようだね」
リヴァイの隣に並んだエルヴィンが、黙々と学習に取り組むエミリの姿を見て微笑む。
最近は、筆を握ったままぼーっとしていることが多かった。しかし、今はしっかりと参考書と向き合い筆を動かしている。
その様子から、自分なりの答えを見つけることができたのだということが見て取れた。
「……おーい、エミリーー!!」
「おい、クソメガネ! あいつの邪魔をするんじゃねぇよ」
リヴァイが止めるも、ハンジはまたもやそれを無視してエミリの元へ突進していく。
「チッ、馬鹿が……」
「まあ、ハンジの気持ちはわからないことも無い。つい、構ってしまいたくなるものだからな」
「あのなぁ……」
二人揃って何を言っているんだと、エルヴィンにも冷たい視線を送るが、彼もそれを気に停めずにハンジの元へ歩いて行く。
仕方なくリヴァイも後に続いた。
「あっ……団長、兵長、お疲れ様です」
ハンジと会話をしていたエミリにエルヴィンが声をかけると、二人の存在に気づいたエミリがペコリと会釈をする。
「調子は良さそうだな」
「はい!」
元気の良い返事と笑顔は、リヴァイたちがよく目にするいつものエミリだ。
自分たちの知らない間に、いつの間に立ち直っていたのだろうか。
リヴァイは、それが少し気になって仕方がなかった。
「ねぇ、エミリ……? これって、勉強始めた時に使ってた参考書でしょ?」
ハンジが手にした参考書の表紙を見てみると、確かにエミリが試験勉強を始めた時に愛用していた、初歩的な内容が書かれている本だった。