Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第16章 欠落
調査兵団では、冬は壁外調査が行われない代わりに、会議の数が増える。
資金調達やそれ関係の打ち合わせ、今後の予定、春に入団してくる新兵たちのこと、そして、新兵が入団する前には班の大幅な編成が行われる。
それらに向けて、エルヴィンやリヴァイを始め、分隊長や班長が集まり、何度も会議を開くのである。
そして今日も、次回の壁外調査の経路について話し合いをしていた。
それが終わったのは、もう夜の八時を過ぎていた。夕方には終わる筈だった会議だが、長引いたためこのような時間帯となってしまったのである。
会議室を出た彼らが向かうのは、もちろん食堂だ。
長い会議で頭を使い、腹も空いているため一刻も早く夕飯を食べたくて仕方がない彼らは、足早に食堂へ向かう。
「はぁ〜〜もうお腹ペコペコだよ〜〜早く夕飯が食べたい……!!」
お腹を擦りながら声を上げるのは、ハンジだった。
そんな彼女に冷たい視線を送るのは、リヴァイである。
「何言ってやがる。散々、巨人の捕獲がどうだのとまた騒ぎやがって……それがなけりゃ、会議が終わる時間はもっと早かっただろうが」
未だに巨人の捕獲を諦めきれないハンジの暴走は、本日の会議でもお決まりのように発動された。
興奮した彼女は、リヴァイの静止の声も無視してひたすら巨人の捕獲について話し続ける。
そんな彼女を必死に止めようと奮闘していたのは、やはり副分隊長のモブリットだった。
「そんなこと言われてもさぁ〜〜少しくらい話を聞いてくれたっていいだろ?」
「あ? 何が少しだ。てめぇの話に何度付き合わされたと思ってる。もううんざりだ……」
リヴァイとハンジの感覚が全く違うせいで、話も噛み合わない。
この奇行種には何を言っても無駄だとわかっているが、かと言って無視という方法をとっても延々と話を続けるだけなのだ。
話しを止めるという選択肢が彼女の中には無い。
「ま、巨人の話はまた今度にしよう!」
「だから、聞かねぇと言っている……」
「さぁて、ご飯ご飯…………あれ?」
ようやく食堂だ! と足を踏み入れたハンジの目に入ったのは、隅っこで一人、机と向き合う自分の部下の姿だった。