Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第16章 欠落
「それで、エレンはそのアニって子に勝つために、どうすればいいって思ったの?」
「え、そりゃあ……アニに対抗できる程の新しい技を身につけることかなって」
同じ技で通用しないのであれば、彼女とは違う別の強い技で対応することが一番なのではないか。
単純な考えだが、エレンはそのように考える。
「うーん……それは、どうなんだろう。それ、本当に試験までにちゃんと身につけられるのかな?」
「え」
「あんまり時間無いんでしょ? それなのに、そんな付け焼き刃な技術身につけたって、通用すると思う?」
説得力のあるエミリの意見に、エレンは黙ったまま考え込む。
相手はエレンよりも技術が上だ。そのような相手に対し、付け焼き刃で身につけた未完成な技で挑んでも、勝敗は目に見えている。
「……なら、姉さんだったらどうするんだよ」
「私だったら、今まで身につけた技術を完全に自分のものにするための特訓をする」
「は?」
「……わからない? じゃあ、高い技術を身につけるために必要な土台って、何だと思う?」
エミリの考えを理解できていないエレンに、エミリは問題を出す。
しかし、それでもエレンはしっくり来ていないようだ。腕を組んでひたすら答えを導き出そうと頭を働かせている。
「……土台って……」
「答えは”基礎”だよ」
「え、基礎……?」
それだけ? と言いたげなエレンに、うんと頷いて説明を続ける。
「付け焼き刃になるってことは、自分の力がその技術を得るためのレベルに達していないって意味もあると思うの」
時間が短くても、身につけられる人は本当にそれを短期間で習得してしまう。
エミリとエレンの身近な例で言えば、リヴァイやミカサのような、高い身体能力を持つ人物である。
けれど、彼らのようにすぐに高い技術を身につけられる程の力が、まだついていないというのであれば、力を付ける方法を「今、自分にできること」に目標を変えて探すべきだろう。