Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第16章 欠落
「その言葉を突きつけられた時、目の前が真っ暗になった……自分の今までの努力を否定されたような、どん底に突き落とされたような気分だった。
すごく、すごく悔しくて……仕方がなかったの」
例え結果が悪くても、また次がある。でも、絶対に受かってやる。
そんな気持ちで挑むつもりだった。
けど、いざこうして現実をプロの薬剤師から突きつけられると、その言葉の意味や重みがどれほどのものか……
それを察したから、悩みという渦に呑み込まれ、抜け出せずにいる。
いわゆる、スランプというやつだ。
だから、何をやっても意味が無いものだと感じてしまう。
勉強にも全く手がつかず、ただただ時間だけが過ぎる一方だった。
「情けないでしょ? こんな私……」
「そんなことは……」
なぜだかエレンは、目の前に映っている姉に自分が重なっているように見えた。
それは、エミリも自分自身に呆れているからだろう。
「エレン、悩みにちっぽけなものなんてない。あなたが真剣に考えて、辛い思いをしているのなら、それはちっぽけなものになんてならない」
だから、自分を卑下しないでほしい。
自分をもっともっと、大切に思ってほしい。
人のことを言える立場でないのは、エミリも自覚している。
エミリ自身も、自分をぞんざいに扱うことがあるから。
でも、そうやって自分に自信が持てない気持ちが痛いほどに分かるから、自分のことを棚に上げてでも、誰かを救いたいと思ってしまう。
「……一緒に考えよう? どうやったら、今の課題を乗り越えられるか」
エミリの言葉が心に染み込んで、キリキリとした胸の痛みが和らいでいく。
少し表情が柔らかくなったエレンの頭に手が伸び、ふわりと優しく撫でられる。
「ね?」
「……ああ」
同じ状況にいるからこそ、その苦しみを分かち合える。
「頑張れ」でもなく、「頑張らなくていい」でもない。
「一緒に頑張ろう」と思い合えることで、共に歩んでくれる人がいる安心を感じられる。
それが何よりも心地よくて、エレンは再び前を向けた。