Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第16章 欠落
「……ね、姉さん!?」
地面に着地したエミリの登場に目を丸くするエレンに、エミリはにこりと微笑んだ。
「エレン、よそ見しない! 後ろ!!」
エミリがそう言った瞬間、背後に感じた気配にエレンは咄嗟に振り向き、相手の拳を避けた。
「これでも……くらいやがれ!!」
そのままエレンは、相手の手首を掴んで背負投を決める。ドシンと鈍い音と共に少し地面が揺れ、二人目を気絶させた。
「……くっ、クソお!!」
あっという間に格闘術で倒していく二人に圧倒された残りの一人は、気絶した仲間の二人を置いて逃げようとしていた。
「ちょっと待ちなさいよ」
しかし、方向転換した男の前に素早くエミリが回り込み退路を防ぐ。更に、挟み撃ちで男の背後にエレンが立つことで、完全に男の逃げ道は無くなった。
「ほら、観念しなさい!!」
「……う、うるせぇ!!」
悔しげに叫んだ男は、懐からナイフを取り出し刃をエミリに向けて振り上げる。
そうまでして捕まりたくないのかと、内心呆れながらも体を勢いよく一回転させ回し蹴りを喰らわせる。
踵が見事に男の頬にクリーンヒットし、痛みによって体の力が抜け、男の手からナイフが落ちた。
バランスを崩しながらもエミリの攻撃になんとか踏ん張り、「くっ……この小娘が!!」と鋭い眼光をエミリに向ける。
ここまで攻撃を受けてもまだ反撃をするつもりなのか。その精神力に呆れを通り越し感心した。
「もっとその忍耐強いとこ、ちゃんとしたやり方で活かせばいいのに……」
「うるせぇ……! 調査兵団は、巨人の餌食にでもなってやがれ!!」
その暴言にプツンと堪忍袋の緒が切れた。最高の拳をお見舞いしてやろうじゃないか。
拳を作り、思い切りぶん殴ってやろうと足を踏み出した。