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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第16章 欠落


三日後、願書の書類を揃えたエミリは、封筒に詰めたそれを持って郵便局へ提出に来ていた。


「では、お預かり致します」

「あ、ありがとうございます」


必要な書類は、全てしっかりと封筒の中に入っている……はず。
何度も確認し、ペトラにもチェックしてもらったのだ。絶対に大丈夫と、ソワソワして落ち着かない胸の上に手を置いた。


郵送のための代金を払い、お釣りを受け取って郵便局を出た。

外の冷たい風に体が震えるのを感じながら、エミリは手袋を付けて兵舎に戻るために歩き出す。

雪によって真っ白になった地面に足跡を付けながら、手袋を付けた手で、自分の頬を包んだ。


「……うっ……さ、寒い……」


ビュッと勢いの良い冷たい風が吹き、体を縮こませる。
この時期の寒さは本当に厳しいものだが、暑さにとてつもなく弱いエミリにとって、夏の暑さと比べれば冬の寒さなど大分マシだ。

これが暑さとなれば、それこそ全てのやる気が奪われて何もする気が起きなくなる。
体の動きだって驚く程に低下するため、夏の壁外調査はいつも以上に命懸けだ。
何度、オルオに「だらしない」と嫌味を吐かれたことか。


(あ、そういえば……ハンジさんがホットミルク飲ませてくれるって言ってたっけ……)


先日、知り合いから牛乳が送られてきたと聞いた。せっかくだから、ホットミルクでも飲ませてあげるよと言ってくれたハンジの言葉を思い出し、エミリは歩く速度を早める。

ウォール・マリアが巨人に蹂躙され、土地が減ってから牛乳など貴重な食材となった。
シチューの味だって、昔食べていたものと比べると味がも薄くなっている。

そんな贅沢な品を頂けるのだから、早く帰るに越したことはない。

いっそのこと走って帰ってしまおうか。
早歩きから全力疾走に変えようとした時だった。


「誰かぁ!! その男を捕まえとくれ!!」


悲鳴にも似た叫び声がエミリの耳に届いたため、思わず足を止めて声のした方へ振り向いた。
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