Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第16章 欠落
アクセサリーショップに戻ると、既に注文した品が完成していた。
職人に代金を支払い品を手に持ったエミリは、さっきと同じように外で待っているリヴァイの元へ戻った。
「お待たせしました!!」
「結局、何を注文したんだ?」
ヴァルトの費用から金を出したのだから、ヴァルトのもので間違いないだろう。だが、アクセサリーショップとヴァルトに何の関係があるのだろうか。
「ふふん……これを作ってもらうためです!!」
じゃーん! とエミリが袋から取り出して見せたのは、小さなベルトの輪。そこには、革で作られた自由の翼の紋章がぶら下がっていた。
「これをヴァルトの首輪にしようと思うんです!! ヴァルトだって立派な調査兵団の一員なんですから、自由の翼は必要ですよ!!」
エミリは、ヴァルトに自由の翼の紋章を自分たちと同じように身につけてほしかったから、わざわざ注文までして作ってもらったようだ。
「……別にそれは構わねぇが……俺からすりゃあ、こいつ自体が自由の翼にも思えるがな」
「え?」
人類に貢献しなくても、人の手など借りずとも、ヴァルトは一人で、この大きな羽で壁の先へ進むことができる。
ヴァルトは、本当の意味で自由を手にしているのだ。
そんなヴァルトに、自由の翼の紋章は必要あるのかと思ってしまう。
「もう、兵長ってば硬いこと考えすぎですよ! 同じ物を身につけることによって、仲間意識が更に芽生えていいじゃないですか!!」
「まぁな……好きにすりゃあいい」
「じゃあ、早速付けましょう!!」
ウキウキとリヴァイの腕に乗っているヴァルトに近づき、首輪を通す。
キツすぎず、緩すぎず、ヴァルトが苦しくならないようにしっかりと調整した。
「こんな感じでどうですか?」
「ほう……なかなか似合ってるじゃねぇか」
ヴァルトの胸元にぶら下がる自由の翼。
調査兵団の証が、より一層ヴァルトの逞しさを増す。
幸福を呼ぶ鳥として、きっとヴァルトは兵団に大きな福をもたらしてくれるだろう。
「一緒に頑張ろうね!」
エミリが話しかければ、ヴァルトはくてんと首を傾け、その丸い大きな瞳に自分の主を映していた。