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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第16章 欠落


二人の元へ注文した品が運ばれ、それを食べながら他愛ない会話を交わす。
訓練のことやそれ以外のこと、ヴァルトのことなど……

エミリが入団した頃と比べて二人で過ごす時間は少しずつ増えてきたが、これほど落ち着いて会話ができることは無かった。

会話している時に見せる、エミリの様々な表情。笑ったり、怒ったり、素直な気持ちが顔にくるくる変わって表れているところが、何とも愛おしくて仕方がない。

だからこそ思う。
どうせ笑うなら、少し雲がかかったようなものではなく、淀みない笑顔を見せてほしいと。


「エミリよ」

「はい?」

「最近、よく考え事してるみてぇだが……また何か一人で抱え込んでんじゃねぇだろうな?」


ずっとしたかった質問をようやく本人に突きつけることができた。

核心をついたリヴァイの問いかけに、エミリの表情が強ばる。

リヴァイは、その変化を見逃さなかった。


「まあ、お前のことだから……来年の試験のことでも考えてんだろ」

「……べ、別にそんなこと」

「ほう? なら、昨日は何時間ほど勉強したんだ?」

「あ、いや……えっと……」


答えられないのか、エミリは目を泳がせて、マグカップを両手で包み込むように握り込む。

エミリは、少しのことでも嘘など言えない性格だ。だから、たかが勉強時間に関する質問をされても、実際に行った勉強時間しか答えられないはずである。


「……うぅ……」

「観念しろ。悩み事があるんだろう」

「…………」


とうとう無言で俯いてしまったエミリに、盛大に溜息を吐く。そして、片手でガシガシと彼女の頭を撫でてやった。


「……どうして」

「あ?」

「なんで、何も言ってないのに……わかるんですか?」


顔を上げないまま絞り出すような声で、今度はエミリがリヴァイに質問を投げかける。

悩みがあるなんて口に出していないのに、それなのに、その内容まで見抜かれているなど思っていなかった。

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