Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第16章 欠落
エミリが立ち寄った店は、アクセサリーショップだった。
何故こんな所に用があるのかよくわからないままヴァルトを預けられたリヴァイは、店の外でエミリが出てくるのを待っていた。
「お待たせしました〜」
数分ほど経って、エミリが店の中から姿を現す。そんな彼女は、手に何も持っていなかった。
「何か買ったんじゃねぇのか?」
「買いましたよ? ただ、アクセサリーにするには珍しいデザインなので、注文してきたんです。
夕方にはできるそうなので、兵長が良ければ時間になるまでお茶でもしましょう!」
パチンと両手を合わせて提案したエミリは、リヴァイの腕に乗っているヴァルトを自分の肩に戻し、スタスタと歩いて行く。
(俺の意見は無視か……)
完全に自分のペースで話を進めるエミリに溜息を吐きながらも、どこか嬉しいと思っている自分がいる。
それに、これはチャンスだ。
最近、考え事ばかりしている理由をエミリから聞き出すことができるからである。
ショップの並びに建つ喫茶店で一休みすることとなり、店外に設置されているテーブル席へ腰を下ろした。
ヴァルトがいるため店内に入ることはできないからだ。
オーダーを取りに来た店員に注文し、運ばれてきた水を一口飲んで、一服の溜息を吐いた。
「お買い物って楽しいですね〜」
「俺はそうは思わねぇが……女ってのはそういうの好きなやつが多いな」
女はどれも、洋服やらアクセサリーやら好きなものを買っては物を増やしていくイメージが、リヴァイにはあった。
エミリもそうなのだろうか。少し気になるところだ。
「そうですね〜私は美味しいものとか食べ歩くの好きですよ!」
「食べ歩くってなんだ。行儀悪ぃな」
「今はそういうのが流行ってる時代なんです〜それに、食べ歩きっていうのはですね、美味しいものをあちこち食べて回るって意味もあるんです!」
「そんなに意味変わんねぇだろ」
「変わりますよ!!」
呆れたように目を細めるリヴァイに、エミリは負けじと頬を膨らませて言い返す。
なかなか食べ歩きの意味を理解してくれないリヴァイは、どうやら時代の波に乗り切れていないようだった。