Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第16章 欠落
「でも壁外調査の時は、かごの中に入っていた方が良いんじゃないかって思うんです……」
広範囲の移動を必要とする壁外では、伝達以外は常にエルヴィンの元についているのが一番良い。
そのため、鳥かごの中に待機させた状態でエルヴィンに預ける方が良いのではないかと考えていた。
「訓練の時も本番の時も、こいつは期待通り……いや、期待以上の働きを見せた。鳥かごなんて無くてもな。
それに、俺たちよりもこいつの方が壁外で生きる術を知っている。
こいつに関して心配することは、何もねぇと俺は思うが。
それとも、お前はそんなにこいつを信用できねぇのか?」
リヴァイの言葉に、エミリはハッとする。
ヴァルトは、前々回の壁外調査でエミリの命を救ってくれた。
前回の壁外調査でも調査兵団のために活躍してくれた。そうして、人類の力となってくれた。
調査兵団と運命を共にすることを選んだヴァルトは、いつかその選択がヴァルトのこれまでの自由を奪ってしまうかもしれない。
いや、もしかしたらもう縛られているのかもしれない。
そんなヴァルトを鳥かごという檻に入れるのは、なんと酷な話だろうか。
ヴァルトのことを本当に思うのであれば、狭い部屋で過ごさせるのは間違いだ。
「……じゃあ、鳥かごは無しでお願いします!」
自由にのびのびと過ごしてほしいと思うから。ヴァルトに鳥かごは要らない。
店主に断りを入れた後、肩に乗るヴァルトを見れば目を閉じて眠っていた。相変わらずよく寝るなとクスリと微笑む。
代金を店主に払い、荷物を持ったエミリたちは店を後にした。
「買い物はこれだけか?」
「いえ、まだ一つだけ買いたいものがあるんです!!」
そう言ってニッコリ微笑み、そのまま次の目的地に向かって歩き始める。そんな彼女の含みのある表情にリヴァイは少し首を傾け、とりあえず何も言わず着いていくことにした。