Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第16章 欠落
店主が手に持っている箱には、体重計や温度計、水入れといった、フクロウの世話に必要なものが入っていた。
「とりあえず、これだけあれば十分じゃろう」
「わぁ〜ありがとうございます!!」
「フクロウは気温の変化に敏感じゃ。体温によって体調も変わるから、しっかりと体温・室温の管理はしておくんじゃよ」
「はーい!!」
日用品を詰めた紙袋を店主に差し出される。それを受け取ろうとエミリが手を伸ばした途端、隣から別の手が伸びその袋が視界から消えた。
「あれ?」
「俺が持つ」
隣から聞こえた声に反応してそちらへ振り向く。目に入ったのは、袋を持ったまま別の場所へ視線を向けているリヴァイの姿だ。
「……兵長、いいですよ! 私が持ちますから!」
流石に上司に荷物を持たせるわけにもいかない。そう思って手を伸ばすが、ひょいと袋を避けられる。
「あの〜? 兵長?」
「…………」
エミリが声を掛けても返事をしないリヴァイに再び首を傾ける。
本人が持つと言っているのだからその好意に甘えようと、自分で荷物を持つのを諦めることにした。
「あとは鳥かごじゃが、サイズはこれで問題ないか? ヴァルトは中型のフクロウだから、少し大きめのかごを選んだんじゃが……」
「ヴァルト、かごの中に入ってみて」
かごの扉を開け、サイズを確認するために中へ入るように促すが、ヴァルトはそっぽを向いたまま動こうとしない。
「……あれ? ヴァルト?」
声をかけても相変わらず別の方へ顔を向けたまま。何か気に入らないことでもあるのだろうか。
「かごの中に入りたくないんじゃねぇのか」
「え」
「そいつ、ずっと放し飼いだったんだろう。今更かごの中に入れてもそいつにとっては窮屈なんじゃねぇのか?」
「……そう、ですね」
これからは兵団で育てることになるため、なるべくかごに入っていた方が良いとも考えた。けれど、リヴァイの言う通りヴァルトはそれが嫌なのだろう。