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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第16章 欠落




「驚いたわ。まさか、成長した貴女ともう一度会えるなんて」

「わ、私もびっくりです! まさか、先生とお会いしたことがあるなんて! すごく光栄です!!」


興奮が冷めず、エミリの頬はどんどん紅潮していく。
ファティマのような有名な人物と交流を持っていたグリシャの顔の広さにも驚いた。それほど、グリシャの医者としての腕はすごかったのだろう。


「グリシャさんともまたお会いしたいわね。今はどちらに?」

「あ、父は……三年前の惨劇からずっと行方不明なんです。けど、死亡している確率の方が高い、と」


暗くなっていくエミリの表情と話にはっとしたファティマは、申し訳なさそうに顔を歪める。


「……そうだったの。ごめんなさい。辛い話をさせてしまったわね」

「い、いえ! 大丈夫です……!」

「……失礼ついでに聞きたいのだけど、もしかして、貴女が調査兵になったきっかけは……」

「……あの惨劇の前から、調査兵団に入ることは決めていました。けど、故郷が巨人に蹂躙され、母さんが目の前で巨人に食われて、弟たちの涙を見て、思ったんです。誰かがやらなきゃって」


あの日の出来事を思い出しながら、自分の思いを言葉にしていく。

普段、べらべらとこういった話を他人にすることはないが、相手が自分の尊敬する人物だからか、ファティマには打ち明けることができた。


「……それで、どうして薬剤師試験を受けようと思ったの?」

「……壁外調査では、薬を荷馬車に詰めて調査に向かいます。ですが、巨人の襲撃によって荷馬車班が壊滅した場合、薬自体が無くなってしまうことも多いんです」


毎回の壁外調査では、薬を失う頻度もかなり多い。そうでなくても、怪我人の数によって、薬自体が足りなくなることだってあるのだ。


「だから、薬を作れる者がいれば、少しでも兵士の生存率を上げることに繋がると思ったんです」


淀みなく言い切ったエミリの言葉に、ファティマは二の句を紡げなかった。

こんなにも真っ直ぐで純粋に薬剤師を目指そうとする者を見たのは、何年ぶりだろうか、と。

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