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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第16章 欠落




「あ、あの……」

「フン、調査兵なら大人しく壁の外で巨人の餌になってればいいものを……」

「え」

「薬剤師試験を受ける意味がわからねぇな。大体、薬剤師になって何するってんだ。どうせあんたも、いつか無駄死にする運命なんだ。ほら、さっさと帰った帰った」


いきなりそんな暴言を吐かれ、エミリは息を止めた。
なんとなくわかってはいたが、こうして口にされるとフツフツと怒りが湧いてくる。


「……どうして、そんなことを言われなきゃいけないんですか……?」


驚く程に静かで低い声。その声のトーンから、自分がどれだけ怒りを感じているかがわかる。

別に、調査兵団の活動を全ての人に認めて貰おうとは思っていない。
それでも、こうしてわざわざ嫌味を言われてしまうと、喧嘩っ早いエミリの性格では、残念ながら黙ったまま聞き流すことなどできるはずがない。


「薬剤師を目指すのなんて私の勝手でしょう!! あなたの許可がいるんですか!?」


調査兵にだって、巨人と戦う以外にできることがある。人類を自由に導く方法が、小さな希望の光がある。
エミリにとってその希望の欠片が、薬剤師という夢だった。それを目指して何が悪い。

悔しくて、悔しくて仕方がなくて、涙が出そうになるのを必死に堪えながら、店員に訴える。


「この安全な場所で優雅に暮らしてるあなたなんかに、そんなこと言われたくない!!」

「なん、だと!? 小娘が調子に乗るな!」

「はぁ? 調子こいてるのはそっちでしょう!?」


どんどん声が大きくなり、他の客の視線がエミリと店員へ集まる。
今のエミリには、そんなもの気にする余裕なんて無かった。

調査兵団の支持率が悪いなんてこと、幼い頃から知っている。
そして、調査兵となってからどれだけ現状が厳しいものであるか。理解していた。

その上、自分の夢まで否定されたことが悲しくて仕方がなかったエミリは、ただ声を荒らげることしかできなかった。

更にヒートアップしていく言い合い。周りは困惑の表情でエミリと店員の言い合いを静観している。
誰か止めに入った方がいいのではないか。そんな会話をしていた時だった。


「これは、一体なんの騒ぎかしら?」

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